中村一八の知心コラム


仮説力とは何か

分析の前に結論を

仕事で大切なのは仮説力です。仮説力とは、「結論」を先に導き出す力のことです。私たちは学校で、分析してから問いに答えなさいと教えられてきました。算数や数学では"計算"してから、英語や国語では文章を"精読"してからという風にです。計算も精読も分析です。そのため、無意識に「分析→結論」という思考プロセスが染みついています。ところが、仮説力を身につけた人は、分析からではなく、まず「結論」を出してから、後で分析します。

ニューエアでは「どんな仮説?」と常に自分の意見を求められます。入社後、仮説がいかに重要であるかを徹底的に叩き込まれますが、分析もしないのに「結論」をのべることに、最初は戸惑う人が少なくありません。「結論→分析」の思考プロセスに慣れないうちは、違和感を覚え、感覚的にどうにも解せないようです。

仮説力の優劣で成果が違う

仮説力の優劣が、そのまま成果に直結するのがタクシー業界です。日本のタクシーは"流し"と呼ばれる営業が基本ですが、ドライバーの給与体系の多くが歩合制となっています。歩合制とは、"水揚げ(売り上げ)"次第で稼ぎが決まるというものです。では、稼げる人と稼げない人、何がその明暗を分けるのかといえば、それが運転手の仮説力で決まる、といっても過言ではありません。

私も仕事でタクシーを利用する機会が多いのですが、乗車するたびに、「最近、景気はいかがですか?」と運転手さんに聞くことにしています。すると、大半が「いやぁー不景気ですわ」からはじまり、どれだけ現況が厳しいかをこんこんと語ってくれます。

さらに踏み込んで、個人の営業成績のことを尋ねると、「お客さん、ウチらのような商売、客が見つかるかどうかなんて運だよ」と何だかあきらめ口調になって諭してくれます。

そして最後に、社内の成績上位者について聞くと、「いつも同じメンバーだよ。なんかやっとんですかね」とつまらなさそうに答えてくれます。

たしかに、タクシー業界を取り巻く環境は一段と厳しさを増しています。ただ不思議に思うのは、こうした逆風下でも、成績上位を維持するドライバーの顔ぶれは、いつもほぼ同じだということです。万年最下位クラスの人が、ある日突然上位に躍り出ることはあまり聞いたことがないのです。

好成績をキープする秘けつ

稼ぐドライバーになるには、仮説力が不可欠です。ここでいう仮説とは、いつ、どんな場所に行けば、潜在顧客を発掘できるか、お客さまのライフスタイルや行動パターンを想定しながら、「この時間帯はこの場所にこんな人が集まるだろう」と結論づけることです。

コンスタントに好成績を残す人は、どのようにすり寄っていけばお客さまの手が上がりやすいのか、タクシーを使ってもいいと思う瞬間はどんなタイミングなのか、どんな道順でいけば出会う確率が多くなるのかなど、季節によって、天候によって、時間帯によって、さまざまな仮説を打ち立てています。

達人の領域になると、外見や身なり、また目の動きによって、手を挙げてくれるかどうか走行中パッと見ただけで瞬時にわかるというから驚きです。「棚からぼたもち」をねらって、ただやみくもに街を"徘徊"するのか、それともアクションを起こす前に仮説を立てるのか、その後の成果の差は歴然となります。

仮説のスピードと精度

仮説を立てるには、どうしてもより多くの情報を集め、完璧に調べてからという気持ちが先に立ちます。しかし、情報量が少なければ仮説は構築できないという考えでは、いつまでたっても仮説力は身につかないのです。

仮説を立てる上でもっとも大事なこと、それはできる限り早く仮説を立てることです。仮説と検証は常にワンセットです。「雨が降ると、21時頃サラリーマンが駅前に30人の行列ができるだろう」とタクシードライバーが自信満々の仮説を立てても、現場検証して、仮説の間違いに気づけば、すぐに修正し、新しい仮説をつくればいいのです。仮説があっているか、仮説がずれているかはさほど重要ではありません。

いち早く仮説を立てるほど、それだけ仕事のスピードは上がります。また、「仮説→検証」を何度も繰り返すことで、仮説の精度も高まります。ニューエアの社内を見渡しても、仮説力を身につけている人は、仕事が早く、クオリティも高いのは事実です。ただ、それは先天的に頭がいいからというわけではありません。仮説を早く立てようとする意思と繰り返し仮説検証を行う根気があれば、誰もが後天的に仮説力を身につけることが可能なのです。


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